2010年10月20日水曜日

病気が教えてくれたもの

 今日は昨日やおとといとは違って、寒さが少し和らいだ。午後から自転車で出かけたのだが寒いとは感じなかった。もう少し今日のような日が続いてほしい。

 月曜日の夜からNHKの番組「プロフェッショナル/仕事の流儀」という私が大好きだった番組が復活したのだ。これにはうれしい限りだ。この番組はある仕事に精通している人に焦点を当てて、その人を探っていくというものである。今回のプロフェッショナルは呼吸器外科医であった。私はこの呼吸器外科に少し関係がある。
高校生のとき、自然気胸という病気にかかり、呼吸器外科に入院したのだった。自然気胸という病気は肺が破れて、肺に空気がたまるという病気である。そういう病気だと言われた時は本当に悲しかった。なぜ私が、そう何度も思った。最初は近所の病院に行ったのだが、総合病院に行かなければならないと言われ、次の日の朝、その総合病院へと行ったのだ。しかもその日に入院と言われ、それもショックであった。こんなに若いのに、というように。さらに手術までしなければならないと言われたのだ。目の前が真っ白になった。
 入院してからすぐにドレーンという太いチューブを脇の下からメスで穴をあけ、肺の奥まで挿入した。まず肺に溜まった空気を除かなければならないのだ。そのあとCT検査とレントゲンを撮り、結果を待った。CT検査の結果、やはり外科的処置で取り除かなければならないものが見つかったのだ。そして手術が決定した。ドレーンを入れたところや、胸が常に痛むので、普通の呼吸ができなかった。痛むのを防ぐために浅く早い呼吸になってしまうのだ。しかしそれでも呼吸をするたび痛むのだ。痛みをかばうように姿勢もかなり前かがみになり、背中の曲がったおじいさんへと変わり果ててしまった。今まで出来ていたことが一瞬にしてできなくなった。情けないというか悲しいというか、自分でも信じられなかった。
 手術日、和服のようなものに着替え、手術室へと移動した。緑の壁の大きなトンネルのようなところを歩き、部屋へと入った。細長いベッドに横になり、ベッドの上にはドラマや映画などでよく見る、電気がたくさんついた電気スタンドのようなものがあった。全身麻酔をするための針を左手の甲に刺した。そして全身麻酔を入れられた。5秒くらいしたらいきなり目が回り始めた。一気に気分が悪くなったがすぐに睡魔が襲ってきた。10秒と起きていなかったであろう。これほどだとは思いもしなかった。
 目が覚めたころには私の病室へ移動中だった。なぜか涙が出ていた。無事終わったからか、生きていたからか、安心したからかは分からない。お母さんも泣いていた。それを見ると本当に心配をかけたんだと改めて思った。手術中に兄が付けてくれたのか、私の携帯にストラップが付いていた。私にとってそれはお守りだ。今まで一回もそのストラップを外したことがない。もちろん今も私の携帯に付いている。
 このときの私の医者(先生)にかなり迷惑をかけ、お世話になった。非常にユニークな先生であった。最初は大丈夫かなとも思ったが、この先生以外は信用できないと思うくらいこの先生を信用した。
 健康第一と言うが正にその通りだ。健康を失って初めて健康のありがたさが分かる。この経験により私は日常ではなかなかできない社会勉強をすることが出来た。これは私にとって重要な思い出である。今だからこそ笑いながらこの体験談をすることができるが、当時は命懸けであった。この経験によってほんの少しかもしれないが、内面的に大きくなれたような気がする。病気が教えてくれたのだ。

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