2018年11月6日火曜日

ライバルであり、友情である

 最近はかなり寒くなり、朝起きるのが苦痛になってきた。年末に近づくにつれて世間もいろいろ騒がしくなってくるし、落ち着かない時期になる。一年を通じてこの時期が一番イヤな時期である。でもそういう時期もあっという間に過ぎてしまうのはわかってはいるが、先がものすごく長いように感じでしまう。私が興味のあるイベントもあるのだが、繁忙期ということでなかなかその日に合わせて休みが取れないのでこれもまた苦痛である。仕方がないと言ったら仕方のないことなのだが。とりあえず目の前にあることをしっかりクリアしていきたい。

最近もまたDVDやBlu-rayなどちょいちょい取り寄せてしまっているのだが、これは今年の前半に取り寄せた作品なのだが、今日それを観たくなり、やっぱりすばらしい映画だなと思った映画である。これは実際にあった話で伝記映画になるのだが、『ラッシュ/プライドと友情』という映画である。2013年に公開された映画だが、1976年のF1レースの1年を追った作品である。F1は1年を通しての総合得点で優勝が決まるのだが、毎年2人は死亡するという非常に危険なスポーツでもある。その年というかF1界でも伝説となっている二人のレーサーが存在して、一人はニキ・ラウダ、もう一人はジェームズ・ハントである。ジェームズ・ハントは野性的でプレイボーイでその日を人生最後の日のように生き、持ち前のセンス、直感でレースを走る男で、ニキ・ラウダは正反対で非常にまじめで勤勉で“コンピューター”と呼ばれ、車に乗ったり、音を聞いただけでどこに問題があるかすぐにわかるし、それを正確に整備できるレーサーなのである。この正反対の二人の天才の1976年に行われたF1の戦いを描いているのである。この2人はF3時代からすっとライバルで、互いに仲が悪くて「テメー!!この野郎!!」と言ってずっと争っているのである。1976年はニキ・ラウダが総合得点で1位でそれをジェームズ・ハントが2位で追いかけている状態で、ドイツのレースが行われるのだがその日は豪雨でレースのコンディションが非常に悪かったのである。そこで審査が行われるのだがニキ・ラウダは、ここでレースをするのは危険であると。俺たちは命がけでレースしているが、命を無駄にするために走っているんじゃないと言う。そこでジェームズ・ハントは、こいつは今1位だからレースが一つ少なくなる度に有利になるからやめようって言ってるからこいつの話乗るんじゃねえ!と他のレーサーに呼び掛け、審査の結果レースは決行されることになる。ニキ・ラウダは真面目であるし、ユーモアがないので人気があまりないのだが、ジェームズ・ハントは人気者だしロック・スターみたいな存在だったのでこういう場面ではジェームズ・ハントが有利だったのである。しかし、危険だからやめようと言っていたニキ・ラウダが大事故を起こしてしまい、車は炎上。生死をさまよう大怪我をしてしまう。顔が焼けただれ、耳を失うくらいの大怪我であった。太ももの皮膚を移植する手術をしたが、当然ながら元の顔には戻らなかった。でも怪我はそれだけではなく、炎上したときに非常に高温の煙や有毒ガスを吸ってしまったがため、肺からそれを取り出す手術をしなければならなかったが、麻酔なしでそれを行う。そのときニキ・ラウダはテレビをつけさせ、ニキ・ラウダが休んでいる間にもレースは行われているため、ジェームズ・ハントがその間にどんどんどんどんポイントを稼いでいっていたのである。それを観てニキ・ラウダは「ふざけんじゃねーよ!!負けてたまるかよ!!」と思いながら手術をするのである。そして事故からわずか42日でレースに復帰するのである。奇跡の復帰だと言われた。ニキ・ラウダとジェームズ・ハントは互いに罵り合っているが、もしジェームズ・ハントがいなかったらニキ・ラウダは復帰できたのだろうかと思う。もしこのライバルがいなかったら今の実力を出せたのだろうか、ライバルがいたから、お前がいたからここまでこれたんだ、お前がいたからこんなにも強くなれたんだと。ニキ・ラウダの闘志にジェームズ・ハントも応えるのだ。ライバルライバルばっかり言っているけど“友情”ってこのことだったのかとその瞬間は涙がボロボロボロボロ溢れ出てきてしまう。こんなすごい友情ってあるのかと思う。総合得点は依然としてニキ・ラウダが首位だったがジェームズ・ハントは徐々に徐々にポイントを詰めていき、次のレースでジェームズ・ハントが勝てば総合優勝になるというところまできたときに最終決戦となる。しかもその最終決戦の舞台が日本の富士スピードウェイだったのである。さらにこのレースは日本にとって初めてのF1のレースであり、しかもそれが最終決戦の舞台だったのである。こんな完璧なシナリオが存在するのかと。こんな完璧な脚本があるのかと。しかし最終決戦当日は豪雨であった。で、どうなるか!!という話である。こんな実話があるのかとただただ驚くばかりである。車のことやF1の知識が全くなくても思いっきり楽しめる作品である。確かにこの作品は二人の天才レーサーの話であるし、F1の話であるし、レースの話であるが、でもこれは最終的に人生のレースの話になってくるのである。この人生におけるレースのチャンピオンはどっちだったかという話でもある。本当に深い映画になっている。これほどまでに対局の二人が同じ時代にいて、しかもその決着をこの日本でつけたというすごすぎる映画である。ジェームズ・ハントはその瞬間瞬間を生きていて、目の前にお酒があればお酒を飲むし、目の前に女がいればすぐにセックスするし、目の前にチャンスがあれがそれに挑もうとする、明日のことなんかどうでもいい、その瞬間にすべてを尽くそうとする。でもニキ・ラウダはそうじゃないのだ。“偉大な者というのは、凡人が味方から得るよりも、遥かに多くのことを敵から得る者のことをいう”とニキ・ラウダは引用して言うのだ。本当に偉大な人は味方からではなく敵から多くのことを学ぼうとするのだ。人生にはライバルが必要なのだ。ライバルがいるからこそ実力以上のものが出せるし、もっと強くなろうと思える。闘いの中から何かを見出せる人が本当に強い人なんだと思う。これが本当のライバルであり、これが本当の友情である。

2 件のコメント:

  1. お疲れ様です。

    コメントこそできていませんが、いつも楽しく拝見しております。
    本当は以前みたいに、ご紹介いただいた映画を私も探してからコメントさせてもらいたいとは思うのですが、なかなかそれができそうにありません。すみません。

    ニキ・ラウダが大怪我を負うことになったドイツのレースですが、このような結果を招いてしまったことに対してジェームズはどのような反応だったのかなーと思いました。
    ライバルであると同時に、大切な友人だったわけですよね?
    ジェームズも、こうなってしまった責任みたいなものを感じていたのでしょうか?
    この事故のあと、ジェームズがどんな表情・どんな態度でニキ・ラウダと接していたんだろう、と思います。
    このあたりのくだりも、ストーリーを盛り上げている要素でしょうか。(^^)

    「“偉大な者というのは、凡人が味方から得るよりも、遥かに多くのことを敵から得る者のことをいう”とニキ・ラウダは引用して言うのだ。
    本当に偉大な人は味方からではなく敵から多くのことを学ぼうとするのだ。人生にはライバルが必要なのだ。ライバルがいるからこそ実力以上のものが出せるし、もっと強くなろうと思える。闘いの中から何かを見出せる人が本当に強い人なんだと思う。これが本当のライバルであり、これが本当の友情である。」とありました。
    たしかに、ライバルがいたほうが切磋琢磨できると思いますね。
    本当のライバルとはつまり、互いに尊敬し向上しあえるような友人ということですね。

    私の場合普段の仕事では、“闘い”をするようなことはありませんので、“闘いのライバル”というよりは、同僚や先輩が実践しているよいところを見つけられるようになりたいと思いますね。
    うまいなーとか、頭いいなーとか、なるほどなーって思えるような他人のよい実践を、自分もぜひ見習いたいものです。
    そして自分自身では、失敗したこと・教訓だなって思ったことを忘れないようにしたいと思います。次回に生かせない失敗ばかり重ねることほど不毛なことはないな…って最近思います。

    SAMURAIさんには、ニキ・ラウダみたいな「本当の友人でありライバル」みたいな方はいらっしゃるのでしょうか?

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    1. Abbyさん、コメントありがとうございます。
      全然お気になさらなくて大丈夫です。
      もしお時間に余裕があるときにでもで大丈夫です。
      このブログで今までもそうですが、ちょくちょく映画を取り上げておりますが、それらはすべて私がおススメの作品ばかりです。
      もちろん文面を見ればすぐにわかりますが、おススメでない作品や作品の問題点などはそういうふうに欠いておりますので、おもしろかった!というのは全て観て損はしないと思っています。
      もちろん私の個人的な感想なので、私がおもしろいと感じても他の人はそうでもないと思う作品も当然ありますが、私が個人的にすごいとかおもしろいと思う理由であったり、注目すべきポイントやシーン、セリフなども書くようにしております。
      そういうのも踏まえて気になった作品をご覧いただければと思います。
      誰もが知っている有名作品以外の作品などもできるだけご紹介しております。
      有名だから良い作品というわけでもありませんし、何かしらの賞をとったから良い作品というわけでもありません。
      無名の作品でもすばらしいのがたくさんありますから。
      そういうのも取り上げています。
      もし気になった作品があれば一度YouTubeかなにかで予告編をご覧になればある程度作品のイメージはつかめると思いますので、そういうのもおススメです。

      今回の『ラッシュ』という映画もものすごくすばらしい作品でしたね。
      ジェームズ・ハントはその瞬間を生きている人だったので、人生も短かったです。
      それを知ったニキ・ラウダはそこまで驚きはしなかったそうです。
      彼らしい人生だと。
      ニキ・ラウダは今回の作品について、ハリウッド的なシナリオの変更は一切なく、本当に驚くほどよくできた作品だったと言っていました。
      ニキ・ラウダは大事故を起こしてレースに復帰したとき、ジェームズ・ハントは「俺のせいでこんなことになってしまった」と言いましたが、ニキ・ラウダは「その通りだよ、お前のせいだよ」と言っていました。
      でもその後にジェームズ・ハントに良いことを言うんですね。
      互いに認め合っているんですね。
      こいつはとんでもなくすごいヤツなんだと言葉にはしませんが、互い尊敬していました。
      そして目の前では見せない友情もあります。
      そこに本当に涙が出てきますね。
      どちらともサイコーにカッコいいです。
      私もそういう“ライバル”はいないかもしれないですね。
      仕事でもそういう感情を持ったことは一度もないですし、そもそも仕事に対してそこまで私の気持ちがならないというのが一番の理由ですし、あらゆる状況で起こることに対してただただイライラするだけというどうしようもない職場なので、今回の作品のような美しい描写は一切ないというのが今の状況です(笑)。

      話は少し違いますが、私は友達というのが少ないです。
      数年前に兄の結婚式に参加しましたが、そこには当然ながら兄の友人がたくさん駆けつけていました。
      それを見て私にはできないと思いました。
      何度か書いたことがあるかもしれませんが、生きている間に一生と友達と言える存在が5人もいればそれはすごく多いんじゃないかと思っています。
      ありがたいことに私には数少ないながら一生の友達と言える友人が存在します。
      本当にありがたいですし、心から感謝しています。
      その友人たちと、いろんな意味で互いに刺激し合える仲であったらいいなーと思っています。
      当然ながら考え方や捉え方は全然違いますので、それだけでも勉強になります。
      そういう存在がいてうれしい限りです。
      切磋琢磨し合えるのが一番の理想ですね。

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